ISO 9241-210 における UX 定義の和訳について

May 8, 2014
Manabu Ueno

前に、ISO 9241-11 における Usability の定義の和訳がおかしいのではないかということを書いた。

原文が外国語の定義文は、例えば JIS 化される際に言ってみれば公式な和訳が与えられることもあるが、多くの場合、最初に誰かが便宜的に和訳したものをみんながコピーして使っていくうちにデファクトになってしまう。その間に、どれだけの人が原文を確認するだろうか。

最近気になっているのは、ISO9241-210 における User Experience の定義と言われる文の和訳だ。

原文はこう:

“a person’s perceptions and responses that result from the use or anticipated use of a product, system or service”

この和訳として、次の文をよく目にする:

“製品、システムまたはサービスを使用した時、および/または使用を予測した時に生じる個人の知覚や反応”

これ、先の Usability の定義にくらべれば論旨が曲がってないのでよいのだが、やはり関係詞の解釈というか、名詞のくくりかたというか、何か原文と違うものになっていると感じる。

それに、原文で「or」というところをわざわざ「および/または」というふうに不必要に単語を増やしていて余計なニュアンスを加えているのも気になるし、「〜した時に」とあるけれどこれに対応する「when」のような単語は原文にはないのも不自然だ。

そこで、私はこう訳した:

“製品、システム、またはサービスの、利用または予期的な利用の結果である、人の知覚と反応”

仕事でクライアントに説明する時などはこの訳を用いている。

そもそも、Usability の定義にしても、User Experience の定義にしても、原文を書いた人がどれぐらい一語一語を考え抜いた上で記したものなのか分からないし、正直何を言ってるのかよく分からない定義なのだが、それでも定義文である以上、それを訳す際には、できるだけ正確に直訳するのが望ましいと思う。

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