Analog

グラフィックソフトの操作というのは、かなりアナログ感が強いものです。手を動かして対象物を操り、加工していくという現実世界での作業感覚をそのままスクリーン内の二次元空間に持ち込んでいます。マウスを動かす身体的な動作が、そのままスクリーン上のキャンバスに反映されます。線をひいたり、オブジェクトを不定形に選択したり、ドラッグで移動したり、キャンバスを掌でスライドさせたり。つまり直接操作です。

グラフィックソフトでは、クリックする座標が1ピクセル違えば、それは異なる入力情報となります。その意味で、作業のある場面で取りうる行動は無数にあり、タスク全体で見れば操作手順はほとんど無限にあります。手順というものは無いも同然です。

グラフィックソフトで何かを作ろうと思った時、事前に操作の全ステップを計画することは無いでしょう。経験的に効率的な作業フェーズをイメージすることはあるでしょうが、次にどういう行動に出るかは、その時の対象物の状態から逐次判断されるのです。グラフィックソフトに限らず、ワープロで文章を書くなど創作系の不定形作業では皆そういう感覚がありますが、グラフィックソフトでは特に顕著です。

いってみればこのアナログ感が GUI のパラダイムなのですが、これをスポイルする手続きが頻繁に必要になるのも事実です。それは、メニュー選択やボタンのクリックです。これらは、作業の対象物に直接働きかけるための操作ではなく、提示された選択肢から目的に合う項目をデジタルに指定する間接的な操作です。だからこの手続きをキーボードショートカットで行うことで、タスク全体のフローは大きく効率化されるのです。

これは、マウスで選ぶよりもキーボードの方がいくらか速い、といったスピードベンチの話ではなく、作業に対する意識の純度の問題です。

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