数年して、気がつくと、僕は Mac を道具にして広告などを作るグラフィックデザイナーになっていました。Mac を使って物を作るのは相変わらず楽しくて、徹夜も苦になりませんでした。
この楽しさはいったいどこから来るのだろう、というのが僕の疑問でした。機械の操作が楽しいという経験は、車と Mac だけでした。考えても理由が分からなかったので、恐らく、作った人にも分からない、何か偶然の産物なのだろうと勝手に思っていました。
オフィスには広告を出稿した掲載紙が沢山置いてありました。その頃のクライアントの多くはコンピュータ関係のベンダーやショップだったので、Mac 関係の雑誌もいろいろあり、僕はいつもそれらを隅々まで読んでいました。記事の中には時々、Mac の歴史みたいな解説があって、ダグラスエンゲルバートとかアランケイとかいった名前が登場していました。ただ、Mac の楽しさがどこから来るのかということについて端的に言い当てているものは見つかりませんでした。「Macの謎」という本があって、Mac の技術的な特徴について分かりやすく書いてあり、参考になりましたが、僕の謎はまだ解けませんでした。
僕の仕事は DTP で印刷物のデータを作ることだったので、組版とか印刷技術についてもそれなりに勉強しましたが、僕の興味の対象はどちらかというと、道具である Mac 自体の操作性に移っていきました。
もうグラフィックデザイナーに … 飛びましたね …