僕が最初にパソコンに接したのは、「コンピュータサイエンス101:DOS の基礎」とかいう大学の授業でした。
僕はその頃、将来はバンドマンか画家か写真家か小説家になろうと思っている根っからの文系人間で、コンピュータについては全く興味がなく、できれば一生関わりたくないと考えていたのですが、一般教養の単位のためにその授業を取ったのでした。
授業は最初、理論というか概念的な説明から始まりました。教師が黒板に木の根っ子みたいな絵を描いて、ディレクトリがどうのこうのと言い出しました。僕はファイルシステムやメモリシステムについて何の前提知識も無く、そもそもコンピュータが何をするための機械なのかも知らなかったので、木の根っ子がコンピュータとどういう関係があるのかさっぱり分かりませんでした。
考えてみると、それまで僕の頭には、ツリー構造という抽象概念は無かったのかもしれません。
マトリョーシカみたいな入れ子構造と言ってくれればまだ分かったかも知れませんが、それでも、マトリョーシカと木の根っ子が同じものとは到底思い当たらなかったでしょう。