Shortcut

僕が仕事で使っていたソフトは、もっぱら、QuarkXPress、Illustrator、Photoshop といったグラフィックソフトでした。ある日、新しく Dimensions というソフトを使おうとしたところ、使い方がよく分からなかったので、知り合いの DTP のベテランの人にオフィスに来てもらって、教えてもらうことになりました。

その人はオフィスに来ると、早速 Dimensions や Illustrator を使って何かのグラフィックを作る実演をしてくれました。僕はその様子を見て、驚愕してしまいました。なぜなら、その人の操作はあまりに速く、そして何をやっているのか全く分からなかったからです。

操作が早いといっても、マウスやキーボードを忙しく動かしているわけではありませんでした。むしろ僕に分かりやすいようにゆっくりと操作しているようにさえ見えました。ほとんど手を動かしていないんじゃないかというぐらい、最小限の動作しかしていないのです。

僕は画面上のマウスポインターの動きを一生懸命目で追っていましたが、それでも何をやっているのか分かりませんでした。手をほとんど動かしていないのに、作業はどんどん進んで行くのです。操作手順を覚えようと思っても、その作業から決まった手順のようなものは見えてこないのです。

僕はあることに気付きました。その人の左手は、常に親指をコマンドキーに乗せていて、それがホームポジションになっていました。そしてキーボードショートカットを多用しているのです。右手は常にマウスを持っていてアクセラレーションをうまく使って最小限の動きでターゲットの座標にポインターを移動します。この、マウスとショートカットの組み合わせを徹底して続けているようでした。僕は画面よりもその人の手の動きに着目しました。それは曲げわっぱ職人のように無駄がなく、優雅でした。

マウス操作とキーボードショートカットは交互に行われているようでした。対象物の選択はマウスで行い、それに対するコマンド実行はショートカットで行っているのでした。ショートカットのキーコンビネーションはほとんど手が覚えてしまってるようで、考えることなく指が動いていました。トランペットの奏者がドレミという音階を吹く時、それぞれの音の押さえ方を意識することなく、音程と指の形がダイレクトに一体化され、無意識的に運指がなされるのと同じ感じでした。コピー、ペースト、アンドゥ、ウィンドウを閉じる、ツールの切り替え、キャンセル、その他アプリケーションに用意されている基本的なコマンドは、マウスによる対象選択の後、ショートカットによって瞬時に実行されるのでした。

そういう操作で作業が進められると、第三者からは何をやっているのかさっぱり分からないのでした。

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