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神輿のオブジェクト指向性について

神輿とその渡御には様々な方式があるようだが、そこにはオブジェクト指向プログラミングに通じるコンセプトがあるように思う。 インスタンス 神輿は祭の際に一時的に神霊を運ぶ輿であるが、神輿が氏子の町内を渡御している間、神様は神社を留守にしているのだろうか。複数の氏子町内で同時に渡御が行われることも普通であろうから、ひとりの神様が一度に一ヶ所にしか存在しないと考えるのは不自然だ。やはり同時に複数存在できるのだろう。これはインスタンス化のコンセプトと似ている。神社にある宮神輿がプロトタイプであり、その性質を継承した町内神輿がインスタンスとして new されていると考えるとよいだろう。 カプセル化 神輿は神社をかたどっている。神社は神様の家だ。神棚などと同様に、擬人化した偶像ではなく、その家をもって神のメタファーとしている点が興味深い。神殿の中には神様がいるはずだが、その中を覗くことはできない。社というインターフェースがエクスポーズされているだけだ。人々はそのインターフェースを通じて神とインタラクトする。これはカプセル化のコンセプトと同じだ。 ポリモーフィズム 神輿の形状や担ぎ方には様々なスタイルがあるだろうが、概ね似ている。人々は何本かの棒の上に社を乗せて、それを担いで運行する。神輿はとても重く作られているし、担ぎ棒は決して人間工学的に担ぎやすいようにはできていない。むしろできるだけシンプルでプレーンな構造を保っているから、それを担ぐものは身体的苦痛を余儀なくされる。しかしその苦痛が祭の高揚感と相乗して、独特の興奮をもたらす。神輿の楽しみは、神輿自体のインターフェースにあるのではなく、それを担いた者の内部に起こる集団心理的なエクスタシーから成っている。このシンプルなインタフェースと多様なアウトプットは、ポリモーフィズムと言えるだろう。